2023.06.11 Sun.
まず健康診断にはどういった内容があるかについて簡単に説明します。
:身体検査
体重測定・体温測定・聴診(心音、肺音)
視診・触診検査
身体検査とは飼い主さま同伴のもとでおこなえる、簡易的ではありますが大切な検査になります。
猫ちゃんの負担が少なく費用面も最低限に抑えることができますが、その反面分かることも限られています。
体重の増減は猫の体調を知る重要なバロメーターです。意外にも愛猫の体重の変化に気がつかない飼い主さまが多いため、日頃からおおよその体重を知っておくことは大切です。
また歯周病や耳・皮膚のトラブル、お腹の触診においては便秘や腫瘍などの病気の発見につながることもあります。
:血液検査
猫ちゃんの前肢もしくは後肢から採血をします(採血量は多くはないため貧血の心配はありません)。
血液検査では貧血や炎症の有無、栄養状態、臓器の異常(肝臓・腎臓など)、糖尿病等のリスクがないかの判断が可能です。
異常値があった場合、各々追加検査が必要になります(超音波検査・レントゲン 検査など)
また、血液検査には甲状腺ホルモン・膵炎のマーカ・心不全のマーカーなどの項目もありますが、一般的なスクリーニング検査には含まれていないため、気になる場合は獣医師に確認してみてください。
:レントゲン検査
エックス線を用いて胸部、腹部、骨の形態を全体的に映し出す検査になります。エックス線による被曝を心配されるかもしれませんが、1回の被曝量はとても少なく注意を払えば危険なものではありません。
レントゲン検査では内臓や骨の大きさ、形態、配置、エックス線の透過性などを見ます。正常時との比較が大切になってくるため健康診断で撮影しておくと今後の比較に役に立ちます。
また無症状の猫ちゃんでも、気管支や肺の異常・結石(腎臓・膀胱・胆嚢)、胃の中の異物などが見つかることもあります。
:超音波検査
猫ちゃんの身体の表面に超音波プローブをあて、体内の臓器からはね返ってくる超音波を画像として映し出す検査になります。
痛みや放射線の被曝の心配もなく、身体の負担が少なく実施できる検査の一つです。
(毛があるとうまく描出できないため、場合によっては毛がりを実施します)
腹部超音波検査では肝臓、胆嚢、脾臓、膵臓、腎臓、膀胱、子宮などの臓器を全体的にみることができます。
臓器の形の異常だけではなく、腫瘍・結石 ・炎症などを見つけることができます。消化管の動きを観察できることも特徴です。
心臓超音波検査では心臓の形態や動きをみることができます。中高齢の猫ちゃんや遺伝的に心疾患のリスクのある猫種に実施することが多いです。
:尿検査
尿の色調、透明度、尿比重、尿潜血、尿PH、尿タンパク、尿糖、ケトン体、尿ビリルビン、尿沈渣、が主な項目になります。
各項目で判断する内容は異なりますが、膀胱炎や結石、糖尿病、腎臓病などの病気の判明の手助けになることがあります。
採尿方法に関しては病院によって方針が異なるかもしれませんが、大きく分けると3つの方法があります。
【自然排尿】
自宅で猫ちゃんが排尿した際に採尿し、検体として病院に持参してもらいます。
病院で採取しなくていいため猫ちゃんにとってはストレスのない方法ですが、採取自体が困難であったりゴミや雑菌等の混入がデメリットとなります。
【膀胱穿刺】
超音波ガイド下で、お腹から膀胱に針を刺して尿を直接吸引する方法です。怖い印象があるかもしれませんが、膀胱内に尿が十分にあり猫ちゃんが少しの間
じっとできる場合はリスクはかなり低いです。メリットとしてゴミや雑菌の混入がなく細菌培養にも適しています。
【カテーテル採尿】
男の子の陰茎から尿道カテーテルを挿入し採尿します(基本的には女の子のカテーテル挿入は困難)。膀胱に尿が溜まっていない場合にも採尿できるのと、
尿道の開通を確認することができますが、猫ちゃんが嫌がることが多く人為的に雑菌を混入させてしまうリスクがあります。
:便検査
色、形、寄生虫の有無、腸内細菌のバランスを主に検査します。
自宅でなるべく新鮮な便を採取し、持参していただきます。トイレの砂ごとでもいいのでビニールなどに入れて乾燥しないように保存しましょう。
子猫や下痢気味の場合には必要な検査の一つになります。
:血圧測定
シニアの猫ちゃんに見られることが多い高血圧症の診断をすることができます。また慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症を持っている猫さんに
特に推奨される検査になります。
腕や足、尻尾にカフを巻きつけて測定する簡単な検査ですが、猫ちゃんがじっとしてくれることや来院によるストレスを考慮しなければいけないため
正確な測定が困難な場合が多々あります。
測定値が疑わしい場合は一度で判断せず、日をあらためて測定し直してもらいましょう。
上記が一般的な動物病院で実施されている健康診断の項目になります。
わたし自身、一飼い主としてストレスをかけすぎない検査を実施することを心がけているため、猫の年齢・性格・持病の有無を基準に検査項目を決定するように心がけています。
動物病院によっては年齢によって健康診断の内容が定まっていることも多いため、それを参考に実施してもらっても良いですが、飼い主さまが日頃の愛猫の気になっていることを獣医師と相談しながら検査をすすめることも大切だと思います。