猫の往診診療について

2024.02.01 Thu.

オーナーさまのご相談の中で、愛猫が外に出ると怖がったりパニックになるため動物病院に連れて行きたくない、とのお話を度々耳にします。
私自身も怖がりで神経質な猫たちと暮らしているため、痛いほどその気持ちを実感しています。

そうは言っても、愛猫さんの具合が悪そうな時やワクチン接種・健康診断の為に動物病院への受診を余儀なくされることはあります。
今回のコラムでは、猫を外に連れ出さなくても診察できる「往診」についてお伝えします。

以下に、往診に関するメリット・デメリットを簡単にまとめました。

往診のメリット
1 猫ちゃんを外に連れ出さなくていいためストレスが最小になる
2 病院での待ち時間がなく、飼い主さまの時間の制約が少ない
3 慢性疾患を抱えているなどによる、移動による体力の低下を防げる
4 普段の自宅での生活環境を把握できる


往診のデメリット
1 検査の内容に制限があり、また検査結果の報告に時間を要することが多い
2 猫が逃げ回ったり隠れてしまうことがあり、診察自体できない可能性がある
3 往診費用がかかる
4 往診をしている病院を探す必要がある


それぞれについて解説していきます。

メリット1
本来、猫はテリトリー意識が非常に強い生き物です。安全で安心な居場所(テリトリー)の外に出ると大小はあってもストレスは必ず感じます。病院の診察台でずっと震えていたり、大声を出して威嚇する猫さんも珍しくありません。そのため、安心できる自宅での診察は最低限のストレスですむため、メリットとしては大きいです。訪問者によるストレスは多少ありますが、帰宅後はけろっとしている猫さんが多いように感じます。

メリット2
飼い主さまと病院側のお互いにとって都合の良い時間を決めてからお伺いするため、待ち時間等の時間節約になります。

メリット3
長生きしてくれる猫ちゃんが多くなっている分、さまざまな慢性疾患を抱えている愛猫さんも多いです。身体に痛みを抱えていたり、寝たきりの状態である場合など移動自体が体力の消耗をまねくことがあります。また、酸素ケージ内での生活をしている場合は酸素ケージから出すこと自体にリスクがあります。

メリット4
トイレ(排尿・排便)の粗相や飼い主や同居猫への威嚇行動・夜鳴きなどの不安行動などの行動異常の原因として、自宅での環境要因が関わっている事がしばしばあります。往診により、自宅での愛猫さんの生活様式や行動パターンを実際に把握できることは、原因を探るための有力な手がかりとなります。




デメリット1
基本的に往診ではレントゲン検査が実施できません。その他の検査に関しては、ある程度は実施可能ですが検査の結果が出るのに時間を要する事が多いです。そのため臨機応変な対応(検査項目や治療内容)が必要になる場合、往診では不十分な対応となる場合があります。
猫ちゃんがぐったりしていたり何日も前から具合が悪そうな場合は、動物病院に直接受診することをおすすめします。

デメリット2
動物病院では怖くてかたまってしまう猫ちゃんも、自宅のテリトリー内ではとっさに逃げ隠れできます。その場合過度に追い回すことは余計なストレスを生むため、診察自体出来ないこともあります。対策としては、獣医師の到着時間の少し前から、猫ちゃんが逃げ隠れできないような空間で待機してもらうと良いでしょう。

デメリット3
ほとんどのケースで、通常の診察料金に往診費用が上乗せになります。病院からの移動距離や交通手段によっても費用は異なるため、事前に確認しておきましょう。

デメリット4
通常の動物病院では日常の診療が優先されるため、往診診療を実施していない事も多いです。また、限られた時間枠で診療受付していることも多いです。
最近では往診専門で立ち上げられている病院も増えてきているため上手に使い分けすることも大切です。


上記の様に往診にはメリット・デメリットがありますが、わたしが適していると思うケースとして
 
・動物病院でのストレスが大きい猫ちゃんの健康診断
・かかりつけの動物病院で病気が特定できている猫ちゃんの継続治療
・メリット3であげた様な高齢猫さんの診察
・メリット4であげた様な行動異常がある場合

等があげられます。

いずれも、かかりつけ動物病院・往診の病院・飼い主さま、各々が愛猫ちゃんの情報をしっかりと把握し共有することで、よりよい医療が提供できると思っています。
飼い主さまと猫ちゃんがよりよく快適に暮らせるために、上手に往診を使ってみてはいかがでしょうか。